萬古焼産地を支える釉薬製造、 廃業の危機から事業継承へ
2026.04.17
三重県菰野町の山口陶器は、萬古焼産地の分業を支える釉薬製造の継承に乗り出す。担い手の高齢化により廃業の危機に直面する中、産地の基盤を守るため事業を引き継ぐとともに、クラウドファンディングで産地の現状発信も図る。
■背景|工芸全体に共通する「分業の危機」
萬古焼は、土・成形・焼成・釉薬といった複数の専門職による分業で成り立っている。こうした分業構造の中で、いま担い手の減少が進んでいる。これは萬古焼に限らず、工芸の世界全体に共通する課題だ。本件のように何年も先の話ではなく、すでに目の前で起きている現実である。
決断の背景と産地の価値
山口陶器では、これまで自社内での釉薬対応を行っており、自社の製造においては大きな支障はなかった。しかし、産地全体を見たとき、釉薬の供給が途絶えば、ものづくりそのものが成立しなくなる。産地が存続しなければ、その価値もまた失われてしまう。山口陶器のミッションは、「新しい地場産業のかたちをつくる」こと。そのためには、自社だけで完結するのではなく、産地全体の基盤を守り、未来につなぐ必要がある。こうした考えから、自社のためではなく、産地の存続と価値を守るために、釉薬製造事業の継承を決断した。
釉薬は、単なる配合データではない。この産地の土や焼成環境に最適化された“産地固有の資産”である。他産地の釉薬で代替することも可能ではあるが土や窯の違いにより、同じ色や質感を再現することは難しく、品質や表現に大きな影響が生じる。このレシピと知見は、一企業のものではなく、産地全体で受け継ぐべき重要な遺産である。
本プロジェクトの意義~単なる事業承継にとどまらない~
■「裏方の技術」の可視化
表舞台に出ることのない、しかし産地にとって不可欠な「中間工程」の重要性を広く伝える。釉薬製造の様な裏方の技術に光を当て、その価値を再認識する機会とする。
■構造的課題の共有
伝統工芸が抱える「どこか一箇所が欠ければ成り立たない」という分業構造の脆さを、社会全体の課題として提示する。萬古焼に限らず、各地の産地に共通する問題として広く共有していく。
■持続可能なモデルの提示
一企業が技術を抱え込むのではなく、産地の共通資産として技術や知見をアーカイブし、次世代へとつないでいく。新しい地場産業のあり方を提示する取り組みとする。
有限会社山口陶器の事業概要
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- 事業名
- 有限会社山口陶器
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- 業種
- 製造業
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- 事業内容
- 製陶業
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- 所在地
- 三重郡菰野町菰野200-2
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- 電話番号
- 09086767216








