
「無知」だけではない?人びとが陰謀論を受け入れる要因
2025.07.28
2019年に実施されたインターネット調査のデータをもちいて、新たな理論的視点から「どのような人が陰謀論的な言説を受け入れやすいのか」を分析し、陰謀論の種類によって、受け入れやすさに影響する要因が異なるということが分かりました。
データと理論の力で陰謀論支持のメカニズムに実証的に切り込む
労働政治研究事業部の山本研究員が、2019年に実施されたインターネット調査のデータをもちいて、新たな理論的視点から「どのような人が陰謀論的な言説を受け入れやすいのか」を分析した成果が、この度、書籍『学問は信頼されていないのか――統計でみる日本における科学の政治化』(太郎丸博編、新曜社、8月5日出版予定)に収録されます。
意識調査データの統計解析から分かったのは、陰謀論の種類によって、受け入れやすさに影響する要因が異なるということ。具体的には、陰謀論を信じる「入口」になるタイプの言説は、科学者に不信感を抱く人ほど受け入れやすい一方で、科学の知識の高低によって受け入れやすさが変わることはありませんでした。他方、科学の知識がある人は「入口」タイプとより「異端」なタイプの陰謀論を切り分け、後者はあまり受け入れないのに対し、知識がない人は「異端」タイプも受け入れる傾向が見られました。
つまり、陰謀論に「足を踏み入れる」きっかけになるのは科学者不信、そこから陰謀論へ「ハマる」要因になるのは科学的な知識の欠如、というように、2つの要因が異なる段階で効いている可能性が示唆されます。
これまでも、「どのような人が陰謀論的な言説を受け入れやすいのか」という問題については様々な分野で研究が重ねられてきましたが、この論文は、従来の研究で指摘されてきた要因が「陰謀論を受け入れていくプロセスのどこで効くのか」に注目し、新しい知見を導いています。
【出版情報】
山本耕平「陰謀論的言説の受容にいたる二つのルート――エリート不信と知識の欠如」
太郎丸博(編)『学問は信頼されていないのか――統計でみる日本における科学の政治化』第7章として収録
新曜社より2025年8月5日出版予定
https://www.shin-yo-sha.co.jp/book/b665503.html
研究員コメント
陰謀論の受容や信奉という現象は、国際的に膨大な研究の蓄積があるものの、それでもなかなか全体像が浮かび上がってこない難問です。今回の研究も、これだけで全体像がクリアになるというような「奇跡の一本」ではありませんが、この現象を見ていくための補助線は示せていると考えています。「陰謀論とどう向き合うか」という実践的な問題に対しても含意のある分析結果だと思いますので、ぜひ論文をご笑覧いただければ幸いです。
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