
会社を失っても人は離れない。挑戦を続ける三代目の道
2025.10.02
鹿児島・霧島で漬物をつくる日本漬物株式会社は、三代目・後藤浩孝の“再創業”に込めた哲学と、看板商品「薩摩しぼり」の背景を公開します。本リリースでは、単なる家業承継に留まらない「ゼロからの挑戦」と、人が人を呼ぶ“人徳の経営”、そしてこれからの取り組みをお伝えします。

三代目にして“創業者”。箱が消えても、人が残った
私は福岡県で生まれ育ち、大学を卒業してすぐに家業に入るのではなく、まずは一般企業に就職しました。社会の中で自分を鍛えたいという思いからの選択でした。
その後1997年に実家の後藤漬物へ戻り、販売部門の責任者として東京に赴任。大学時代の馴染みある街でお客様を一から開拓し、漬物という昔ながらの商品をどうやって現代のお客様に届けるかを模索する日々でした。市場の声を直接聞きながら汗をかいた経験は、その後の経営の大きな財産になっています。
長年、販路拡大や商品づくりに関わってきましたが、2021年にコロナ禍と父親の高齢化をきっかけに鹿児島へ帰郷。「もう一度、原点に立ち返ろう」そう決意し、地域に根ざした形で事業を立て直すことを選びました。
そして2024年、再スタートとして「日本漬物株式会社」を設立。会社という箱よりも「人との信頼」を大切にしながら、新たな漬物づくりに挑んでいます。
後藤漬物株式会社は、時代の変化や市場環境の厳しさ、家族経営の方向性の不一致、後継体制の混乱、そしてコロナ禍による販路縮小などが重なり、長年続いた事業を維持することが難しくなったのです。結果として会社は一度幕を閉じることになりましたが、その経験は私にとって「何を残し、何を変えるべきか」を見つめ直す大きな契機となりました。「会社という“箱”がなくなっても、志に人は集まる。もう一度、仲間とゼロから始められる。」
こうして、2024年に新たな挑戦として「日本漬物株式会社」を立ち上げました。
薩摩しぼりは30年。年間60万本の大根を使用
日本漬物株式会社の看板商品である「薩摩しぼり」は、単なる製法の工夫から生まれたわけではありません。大根の水分をしぼることで旨味と食感を際立たせるという逆転の発想が商品の出発点となっています。しぼるのは余分な水分を抜くためではなく、味を設計するためです。噛むほどに旨味が広がり、白いご飯が進む。その独特の食感はここから生まれました。
さらに、同社のこだわりは“素材主義”にある。仕入れる大根は季節や畑ごとに状態が違う。砂糖を使った漬け込み時間を機械任せにせず、人の目と手で細かく調整します。工場では大量の大根が一斉にしぼられ、タルへと収まっていく様子が広がり、映像で伝えたくなるほど迫力のある光景は、職人の技と自然の恵みが出会う瞬間です。
人が育ち、地域が回る仕組みへ
私が大切にするのは「人が育ち、地域が回る仕組み」。農家と作柄や規格を調整し、ロス削減と安定経営に貢献。現場では少量多品種と繁忙期対応を両立し、小回りの利く体制を整えています。直売や催事、SNSで顧客の声を吸い上げ、商品改善に即反映。さらに、未経験者でも1年で製造を習得できるOJTを導入し、人材育成にも注力しています。 伝統は守るものではなく、回すもの。地域や農家、お客様との循環の真ん中に、私たちの仕事を置きたいと考えています。「伝統を回す」考えは、日本の食文化を未来へ繋ぐと信じています。

日本漬物株式会社の事業概要
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- 事業名
- 日本漬物株式会社
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- 業種
- 製造業
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- 事業内容
- お漬物製造、販売
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- 所在地
- 〒899-4503 鹿児島県霧島市福山町福沢4244
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- 電話番号
- 0995-56-2313